2014年10月31日金曜日

代理店は「保健室の先生」みたいなものである。

どうもこんにちは、キャシーです。毎日忙しい日々を送っております。
昨日こんな記事がfacebook内を駆け巡っておりました。


もう代理店事業はキツイんでないか



内容はというと、マージン競争のコンペで疲弊したネット代理店は作業は増えれども実入りが増えず、新規事業と称して様々なメディア運営などに手を出すものの結実することなく結局は厳しい事業環境を抜けだせないでいる的な話でした。

「ネット」代理店としては確かにその通り(そもそもSEMや媒体買い付けだけでは組織や人としての付加価値が出しにくい)なのですが、こと「総合」代理店に関してはちょっと違うんでねーのという視点で今回は書いてみます。


90年代の「商社不要論」に続いて00年代には「代理店不要論」が声高に叫ばれていたわけですが、当の日本における広告の巨人・電通に関しては特に売上が落ち込むことなく、安定的な売上維持(少なくとも大幅な低下はないまま)をしながら事業継続しています。

※電通の月次売上の直近4年間の推移(電通IR資料より)



まぁ確かに2位・3位以下の代理店に関しては売上不振な企業もありますし、電通がイージスグループ買収やDMP周りまでサポートするネクステッジ電通の立ち上げ、電通デジタルホールディングスによるアドテク企業への出資参画などアグレッシブに「次の広告」を見据えて積極的に取り組んでいるところに強さの一因があると思いますが、本当の強さはやはり売上のほとんどを占める「既存クライアントからの広告出稿」をガシっと握っていることによるものです。


冒頭のエントリでは「代理店事業はキツイんではないか」という提起がありましたが、キャシー的には「今後益々電通を始めとする”総合”代理店のニーズはナショナルクライアントを中心に増していく」という感じがしております。



何故か?それは電通などの総合代理店は単なる外部パートナーとしてではなく、クライアントの「保健室の先生」的な役割も占めているからです。


ベンチャー企業の人からしたら「だから大企業はダメなんだ」と思われるかもしれませんが、大企業では日系・外資を問わず日々の「社内での足の引っ張り合い」がひどい会社がたくさんあります。

「◯◯の部署がこういうプロモーションをやるらしいんだが、俺全然聞いてないぞ!どうなってんだ!」

「宣伝部の◯◯が電通と勝手に話して予算申請を通してるらしいがそんなの俺は認めないぞ!!」

そんな言葉が飛び交ってるのが日常茶飯事で、社内の人間を蹴り落とすだの蹴り落とされただの役職を外されただのあいつ常務に気に入れられてるからってうんぬんかんぬん、みたいな話が毎日のように起こっております。


そんな中で「そもそも社内が今どういう状況でどうなっているのか」がわからない社員がたくさんいるクライアントがおるわけです。

しかもそれを「社内の人間に気軽に聞くことができない人間関係」が蔓延しているのもクライアントには多いわけです。



なのでキャシーも代理店時代にはクライアントから様々な相談をされたことがありました。

「うちの◯◯が昨日御社と会ってたって聞いたんだけど、何を話したの?教えてよ」

「なんかうちの◯◯が先週と言ってることがまるっきり違うんだけど、キャシーさん、何か◯◯から聞いてる??」


などなど、「いやいや、御社のその人に直接聞けばいいじゃないですか」と思うことが多々ありましたが、大企業になればなるほどこうした社内でのコミュニケーションが枯渇している会社が散見されたように思えます。


総合代理店としては一応外部事業者として「フラットな」立ち位置にいるので、宣伝部のいろんな人からちょこちょこ話を聞いて、彼らの部署における横断的な情報がある程度集約されてるんですね。
ヘタしたらクライアントよりもクライアントの内部事情に詳しい、なんてのが往々にしてあるわけです。


情報を横断的に持っている代理店は、クライアントの誰もがハッピーになるようにうまーくその辺を調整して、メディアバイイングやプランニングだけでなくてそれこそ「あそこが痛い、ここが痛いと言って保健室に駆け込んでくる生徒のケアをする保健室の先生のように」うまく立ちまわるわけです。



どんなにアドテクが進化しても、ロジカルに考えたら非効率でおかしい、というようなことでも、結局は組織が人が作ってるのでそこに関してガッチリ握っている総合代理店の役割は大きい、ということですね。



こうなってくると、もはやなんでもかんでも代理店を批判するべきなのか、クライアントがしっかりしなければいけないのかわからなくなってきちゃいますね。